保存を前提とした低温調理・真空調理に欠かせない機器は次の5点です。
- 中心温度計
- サラダスピナー
- デジタルはかり
- チャンバー式、またはノズル式真空パック機
- 低温調理器または温度のコントロールできる電気圧力鍋
現在、シンクウキッチンでメイン使用しているものなど、選ぶ際のポイントを記します。
中心温度計の選び方
低温調理・真空調理の核心にあるのは、温度(Temperature)と時間(Time)のコントロールです。
頭文字をとってTT管理と呼ばれています。
ひとくちに温度と時間といっても、器にしなくてはならない温度や時間は多岐にわたります。
- 食材の中心温度
- たんぱく質の変性温度
- 脂肪の融点
- 湯せん調理の水温
- 危険温度帯
- 菌の至適温度
- 毒素の失活温度
- 加熱時間
- 冷却時間
- 微生物の対数増殖期
- 細菌の増殖速度
- 細菌の潜伏期間
- 開封から喫食までの時間
特に中心温度の計測は、低温調理・真空調理に限らず衛生的な調理の基本です。
正しい使用方法と習慣化を持ちましょう。
中心温度計の種類
![](https://vacuum-kitchen.com/wp-content/uploads/2021/09/IMG_20220309_094047.jpg)
代表的な食品用中心温度計のセンサーは下記の2種です。
- サーミスタ
温度によって電圧の変わる半導体を利用したセンサー、電子回路は比較的に単純 - 熱電対
2種類の異なる金属導体で構成された温度センサー、回路は複雑でサーミスタよりも高価- Kタイプ、Tタイプなどの金属導体による測定範囲の違い
- さらに接地型、非接地型など先端部材との接続方法の違い
キッチン用の中心温度計ではサーミスタ方式のセンサーが一般的です。
基本的な構造は電子体温計と変わりませんが、体温計のように到達温度を予測してホールド表示する機能はありません。アラームもありません。
一方、食品製造や大量調理施設など精度と反応速度が求められる業務用には、熱電対の中心温度計も珍しくありません。
ハンディタイプだけでなくプローブ(測温部)接続タイプも使われ、価格もそれなりに高価です。
低温調理で使用するには、サーミスタ方式の一般的な料理用の中心温度計で十分です。
誤差は±1.0℃が一般的です。
水温の測定が遅く不正確というレビューも目にしますが、水は熱源近くに行くほど高温で、絶えず対流しているためうねり・ゆらぎが発生します。
そのため、デジタル表示が定まらないのが正しい状態です。
常に動くデジタル表示を固定するために、ホールド機能がついている機種もあります。
本当に中心温度計の故障?正しい使い方と注意点
正しい計測方法と注意点を知らなければ、思わぬ事故を招いてしまいます。
取扱説明書さえ未読のまま機械のせいにする前に、正しい使い方と注意点を知っておきましょう。
- 一般的には先端2~10mmあたりにセンサーである素子が内蔵されているので、貫通したり中心から大きくずれないように挿す
- 2cmに満たないような薄い食材は垂直ではなくやや水平方向に挿す
- 最も厚みのありそうな3点を計測し、最低点の温度を参照する
本来管理すべきは食材の中心温度です。
低温調理器の設定温度とは、あくまでも本体周囲の水温でしかありません。
先端が針状の中心温度計と真空調理用ムーステープを併用すれば、脱気密封後の中心温度計測も可能です。
サラダスピナーの選び方
![](https://vacuum-kitchen.com/wp-content/uploads/2021/09/IMG_20220309_093854.jpg)
![](https://vacuum-kitchen.com/wp-content/uploads/2021/09/IMG_20220309_093930.jpg)
遠心力を利用して脱水する調理器具です。
基本的にはサラダ菜などの軽い脱水が使用用途ですが、真空低温調理では重量のある下ゆでした野菜の脱水に使用します。
そのため、安定感と耐久性がほしいところ。
シンクウキッチンではKEYUKA サラダスピナーを愛用しています。
![](https://vacuum-kitchen.com/wp-content/plugins/pochipp/assets/img/pochipp-logo-t1.png)
デジタルはかりの選び方
0.5g単位、0~2000gぐらいの一般的な計測範囲があればOKです。
主な用途は下記の場面です。
- 下ゆで時に食材を計量し、レンジ加熱時間を算出
- 袋詰めした食材を計量し、調味液の投入量を算出
家庭用真空パック器の選び方
低温調理で使えるのはチャンバー式、またはノズル式真空パック器です。
![](https://www17.a8.net/0.gif?a8mat=3N8HFE+230PBE+2TTU+HUKPU)
ボックス状のチャンバー内を脱気して減圧させ、密閉後に常圧に戻すタイプです。
真空パックんシェフ2![](https://www17.a8.net/0.gif?a8mat=3N8HFE+230PBE+2TTU+HUKPU)
- 家庭用としては最も真空度が高い
- 食材表層の脱気も可能
- 液体、油分の多い食材もパック可能
- エンボス加工の有無に関わらずナイロンポリ製の真空袋が使用可能
チャンバーと呼ばれるボックス内の空気をポンプで吸い出して減圧します。
圧力が下がると袋内部の液体はぼこぼこと沸騰しますが、温度が変化しているわけではないので、食材を軟化させることはできません。
ボックス内はわずかに残った空気が引き伸ばされている状態で、この状態を維持したままチャンバー内でシールをします。
減圧からゆっくりと常圧に戻すと、袋内の膨張した空気も元の体積に戻ろうとするため、ピッタリと密着した状態になります。
液体内や食材表層の空気もある程度は脱気できるので、より精度の高い脱気密封が可能です。
家庭用と業務用の違いは主にポンプ性能にあり、家庭用ではメンテ不要の小型ドライポンプが使われますが、業務用はよりパワフルなオイルポンプが使用されます。
価格も10倍以上違い、到達できる真空度、連続運転や耐久性など圧倒的な差があります。
![](https://vacuum-kitchen.com/wp-content/uploads/2021/09/IMG_20220309_100415.jpg)
![](https://vacuum-kitchen.com/wp-content/uploads/2021/09/IMG_20220309_100406.jpg)
真空袋の内部をダイレクトに脱気するタイプです。
- 液体、油分の多い食品もパック可能
- シールが安定している
- 市販の食品真空袋が使える
- 脱気には少々コツがいる
- キャニスター接続で減圧空間が可能
- 機種は少ない
中央部の薄い金属板でできたストロー状のノズルから袋の中の空気を吸い出します。
吸い出された気体は集水カップ内を通って機体底部から排気され、液体は集水カップに残ります。
脱気後、ノズルを収納するとシール動作がはじまります。
シールに干渉しないよう熱線よりも下にノズルが伸びるので、液体でも安定した脱気密封が可能です。
ちなみに、家庭用真空パック器で主流の脱気溝式(だっきこうしき)は低温調理にはおすすめしません。
![脱気溝式の真空パック器](https://vacuum-kitchen.com/wp-content/uploads/2022/01/groove_type-edited-1.jpg)
真空パックんプレミアム
に代表される、溝をはさんで間接的に脱気するタイプです。
- 袋の全幅から脱気するので効率がいい
- 袋の空気が無くなると、中央の溝(真空室)は低圧になる
- 脱気が速い
- エンボス加工された袋が必要
(両面エンボス、片面エンボスに注意) - 水分が多いとシールが不安定
- キャニスター接続で減圧空間が可能
- ハンディタイプ、据え置きタイプなど種類が豊富
袋の口を溝にはさみ込み、溝内部の脱気口から脱気します。
袋のエンボス加工は、パッキンで抑えていても空気が抜けやすくするための処理です。
液体があれば溝内部に溜まり、ボタン操作でシールがはじまります。
エンボス加工のためにシール位置の細かい溝に水分が残りやすく、液体のシールは不安定です。
また、集水できる量も少ないので、本体への吸い込みによる故障リスクもあります。
シンプルな構造でコンパクト化しやすい反面、袋の指定や液体不可などのデメリットもあります。
家庭用真空パック器の「真空」とは?
ノズル式と脱気溝式は、どちらも袋の中を減圧することはできていません。
減圧されているのは内部の脱気溝もしくは集水カップ内であり、袋に施されているのは脱気密封です。
JIS(現:日本産業規格)における真空とは、以下のように定義されています。
2.1.1 真空
日本工業規格 JIZ Z8126-1:1999
通常の大気圧よりも低い圧力の気体で満たされた空間の状態。
備考1.圧力そのものをいうのではない。
2.真空の領域は習慣的に2.1.1.1.~2.1.1.4に示す圧力間隔で区分する。
要は、袋の中は減圧ではなく最初から最後まで常圧なのです。
袋の中に空間の骨組みになるようなものを入れるか、キャニスターを接続することではじめて減圧空間内に食品を置くことが可能となります。
真空の特性を活かして脱気密封できるのは、チャンバー式のみです。
注意点は、動作中のチャンバー内は減圧された空間なのですが、チャンバーから取り出した袋の中はやはり常圧だということです。
脱気溝式、ノズル式、チャンバー式、いずれの場合でも真空を作り出す根本の運動はポンプによる吸気であり、できあがるパックの中は基本的に大気圧です。
低温調理器の選び方
![](https://vacuum-kitchen.com/wp-content/uploads/2021/09/IMG_20220315_034832.jpg)
購入前に商品ページで確認するのは次の7つ。
- 年式
Amazonなど通販サイトでは新旧モデルが混在しています。 - 制御基板
「誤作動を起こす」、「電源が落ちる」、「設定温度と温度が違う」といった致命的な基盤不良のレビューが多いものは避けたほうが無難です。 - ヒーターの出力
800~1200wぐらいまでの性能差があります。
90℃以下の温度維持なら850wでも十分です。
出力が高いほどストレス無く水温が上昇し、食材投入後のリカバリーもスムーズです。 - 上限温度が95℃であっても、保温性の高いコンテナやふたなしでは92~93℃ぐらいまでしか上がりません。
さらに、熱伝導率・熱伝達率の関係で、設定温度に近づくほど温度の上昇は鈍化します。 - 下部カバーの着脱方式
内部の乾燥が気がかりな方は、着脱が楽なはめ込み式をおすすめします。 - コンセントの形状
Anovaは海外仕様の3Pプラグなのでアダプターが必要です。
その他の機種はほぼ2Pプラグですが、一応ご確認ください。 - 固定方式
多数派のクリップ式(ばね)と少数派のクランプ式(ねじ)です。
パスタ鍋などの深型なべで使いやすいのはクリップ式。
着脱可能でがっちり固定できるのはクランプ式(ねじ)です。
温度コントロールが可能な電気圧力鍋を使うこともできます。
関連記事:シロカのおうちシェフPROで低温調理・真空調理を楽しむ
まとめ:真空調理をベースにした低温調理に必要な機器は5つ
必須アイテムのポイントをまとめます。
- センサーは一般的なサーミスタ方式でOK
- 先端が針状ならムーステープで脱気包装後も計測可能
- 安定感と耐久性のあるもの
- ふただけの別売りなどあるとメンテナンスもラクに
- 0.1~0.5g単位、2,000g程度の計測範囲
- 入門機ならノズル式を、沼にはまり込めばチャンバー式も検討
- 家庭用として販売されているほとんどは脱気溝式
- 選択肢は少ない
![](https://vacuum-kitchen.com/wp-content/plugins/pochipp/assets/img/pochipp-logo-t1.png)
- 構造が同じなので価格さほど基本的な性能に違いがあるわけではない
- 購入と返品のしやすさを優先する買い方もあり
- 温度コントロール可能な電気圧力鍋で代用も可能
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