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技法とコラム

野菜の低温調理|軟化の仕組みと下処理の目的

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低温調理で野菜を扱うにはちょっとしたコツが必要です。

ポイントは軟化の仕組みと下処理の目的。

調理科学の理解を深め、低温調理のレパートリーを大幅に増やしましょう。

野菜の軟化

ひとくちに軟化と言っても、それぞれの野菜は種類もちがえば食べる部位も違います。

分類、軟化の仕組み、変性の温度について見ていきましょう。

野菜の分類

野菜はおもに可食部の位置で分類され、下処理のポイントも変わってきます。

根菜(こんさい):土の中で成長する根や地下茎など

だいこん・にんじん・じゃがいも・さといも・かぶ・ごぼう・れんこん・ながいも他

葉茎菜(ようけいさい):地表の茎や葉など

はくさい・キャベツ・ほうれんそう・レタス・たまねぎ・こまつな・ちんげんさい・ふき・みつば・しゅんぎく・みずな他

果菜(かさい):植物の実や種など

きゅうり・なす・トマト・ピーマン・かぼちゃ・とうもろこし・さやいんげん・さやえんどう・グリーンピース・そらまめ・えだまめ他

根菜は、イモ類のようなでんぷん質をたっぷりと含むものと、大根のように繊維質が強いものに大別され、軟化の仕組みや下ゆで以降の処理も変わってきます。

葉茎菜ようけいさいはその構造から水分を抱え込みやすい形状をしており、下ゆで後の冷却と脱水がポイントになってきます。

果菜は次の世代の種そのものや、それを豊富な栄養とともに包みこんでいる部分です。

もちろん、野菜によっては加熱調理に不向きなものもあり、処理するポイントは様々です。

軟化の仕組み

動物とちがい植物には細胞壁があり、その構造は例えば鉄筋コンクリートのビルのような成り立ちをしています。

表層に近い部分ほど細胞は小さく細胞壁も厚くなり、中心部へむかうほど細胞は大きく細胞壁は薄くなる傾向があります。

細胞壁を構成しているのがおもに食物繊維であり、不溶性のセルロースは鉄筋のような役割をし、水溶性のペクチンは壁と鉄筋を接着するコンクリートのような役目をたしています。

ビルに見立てれば、この細胞壁でくぎられたひとつひとつは規則正しく並ぶ部屋といったところでしょう。

部屋には壁紙のように薄い細胞膜があり、吸気や排水のパイプの役割は植物の維管束いかんそくになっています。

5分でわかる!細胞壁の構造と働き

加熱が進むとペクチンの一部が脱離し、さらにその一部は溶けだし、やがてビルが倒壊とうかいするように細胞のならびがくずれてしまいます。

さらに加熱が進むと細胞壁や細胞膜そのものがやぶれ、少しさわっただけでくずれ落ちてしまいます。

これが野菜の軟化であり、くずれるまで煮込んだとろとろの状態なのです。

軟化の温度と低温調理器

ペクチンの脱離には少なくとも92℃以上、現実的な調理で考えれば95℃以上の温度が必要です。

この95℃付近の温度変化をめぐり、低温調理と通常調理との間に大きなちがいが生まれます。

通常調理の場合、特に意識することなく沸騰ふっとうすれば火を弱めて煮込むため、95℃前後の沸騰ふっとうしはじめの温度が維持されています。

熱は対流による熱伝達で伝えられ、まるでサンドバッグのように食材表層に衝突しょうとつして分子を振動させています。

一方、低温調理の熱移動は、袋の素材をかいして伝わる優しく包み込むような熱伝導であるため、そうかんたんには「水温=袋の中の温度」になるものではありません。

まず、多くの低温調理器は設定の上限温度を95℃としています。

これは事故防止のためのリミッターのような仕様とも考えられますが、1200wクラスのハイパワー機種であっても実際の水温は92℃前後までしか上がっていません。

92℃以上の温度は、よほど気密性が高く保温性能に優れた容器が必要となります。

さらには、袋の内外が同じ温度になる熱平衡ねつへいこうの状態に近づくほど熱エネルギーの移動は小さくなるため、あと2~3℃足りないという乖離かいりが長く発生しています。

そのため、上限95℃の機種であっても袋の中は実質的に90℃前後にしか到達できていないという調理例が多発してしまうのです。

もともと60℃台の肉料理を想定してあるので上限90℃でも必要十分なのですが、野菜の低温調理に使うとなると話は別。

袋に入れる前にひと工夫、ふた工夫する必要があるのです。

野菜の低温調理の下処理の目的

低温調理における下処理の目的は、不要なものを取り除き、必要なものを残すことです。

不要なものとは、アクやえぐ味、余分な水分、食材内部の空気などがあります。

アクやえぐ味の除去

野菜のアクとは、えぐみやしぶにがみなどの総称で、褐変かっぺんの原因となるポリフェノールやにがみをもつクロロゲン酸、山菜やほうれん草に含まれるシュウ酸など様々です。

また、栽培さいばい方法や季節によっても度合どあいがちがいます。

余分な水分の脱水

下ゆですると水っぽくなるという先入観をお持ちの方も少なくありませんが、むしろゆでた野菜のほうが水分量は少なくなります。

野菜は70~95%が水分で構成されています。

食品成分表によると、生のキャベツはおよそ93%が水分で構成され、ゆでキャベツでも94%が水分です。

例えば、200gのキャベツを真空パックして加熱(95℃/20分)し、業務用のサラダスピナーで遠心脱水すると、重量はおよそ150gになります。

50g(25.0%)の水分がキャベツから失われています。

肉じゃがサイズのじゃがいも200gの場合、加熱終了直後で191gなので9g(4.5%)の水分が流出。
さらに20分の空冷・放熱後は184gなので、トータル16g(8.0%)の水分が失われているのです。

つまり、ゆでると水っぽくなるという感覚は、切片のすき間や表面に付着する水滴がそのように感じさせているだけであり、この野菜の外へと移動した水分こそ、低温調理・真空調理における余分な水分なのです。

また、余分な水分があれば反対に必要な水分もあります。

それは、野菜そのものが内包する水分であり、野菜の風味やうま味を含んだ水分です。

サラダスピナーではなく、手で絞って脱水するとどうなるか・・・

表層の組織は押しつぶされ、薄皮一枚で保たれていた水分までも圧搾あっさくしてしまうことになります。

しかも、しぼり出されているのは外側の水分だけ。
これでは食感を損なうばかりでなく仕上がりにもばらつきが生じます。

袋の中では、この野菜そのものが内包する水分と調味料が調和し、時間・温度に応じて食材内部に拡散かくさんしていきます。

そのため、最小限の煮汁に抑えるためには、2~4割は濃度の高い調味液を使う必要があるというわけです。

真空調理・低温調理の極意があるとすれば、食材中の水分をあやつることだとも言えますね。

食材内部の脱気

食材内部の気体も低温調理・真空調理には余分なものです。

野菜は収穫・カット後も呼吸しており、細胞が生きている限り二酸化炭素を排出しています。
そして、脱気密封したあとも呼吸は続き、温度があがれば呼吸量も増加します。

また、日中は二酸化炭素を吸収し酸素を排出する光合成も同時に行っています。

他にもストレスによるエチレンガスなど、じつに様々な気体を生成しています。

そのため、生野菜を真空パックしても時間とともに気泡ができてしまいます。

真空パックのまま加熱すれば、さらに一目瞭然いちもくりょうぜんです。

気体は熱伝導率も小さく均等な加熱を妨げるばかりか、袋内の酸化を早めることで保存日数にも影響すします。

これを除去するため、8~9割のボイル加熱で止めるブランチング処理や下ゆでなどが行われるのです。

家庭向けの真空パック機には4つのおもに脱気方式がありますが、シンクウキッチンではチャンバー式の真空パック機を使用しています。

業務用の真空包装機とおなじ脱気方式で、これまでの真空パック機にはない使い心地ですよ。

さらに性能を落とすことなくサイズアップした、真空パックんシェフ3+Plus(プラス)がもっともおすすめです。

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まとめ:下処理のコツを押さえると煮ものの真空調理・低温調理はグレードアップ

野菜の軟化の仕組みを理解しておくと、低温調理・真空調理で煮もの調理ができるようになります。

通常調理では同時進行しているため特に意識していませんが、先にテクスチャを整えた食材に時間経過とともに味を染み込ませるというのが煮もの調理の仕組みです。

熱エネルギーの方向と水分の流れる方向は常に逆で、食材が加熱されるとき、水や食材は膨張しようとするため表層の水分は外へと向かっています。

逆に食材から熱が奪われるとき、食材は収縮しようとしているため表層の水分は内へと向かいます。

このとき、加熱により細胞膜の半透性は失われるため、調味料は野菜内部へと拡散していきます。

拡散は、野菜内部の水分と調味液との濃度差が高く、温度が高いほど速く進みます。

真空調理においては、下処理の段階で半透性の機能は失われており、なおかつ濃度の高い調味液を使用します。

さらには、真空(減圧)下での膨張・収縮による、半ば強制的に拡散させた状態からの加熱であるため、通常調理よりも味の染みが速くなります。

肉じゃがや大根の煮ものなど、野菜の下処理をマスターすれば低温調理のレパートリーは格段に増えてきます。

ぜひマスターして、定番の煮ものを低温調理・真空調理してみてください。

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