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技法とコラム

レベル1の低温調理・真空調理とは!?まずはここからの低温調理器つかいこなし術

技法とコラム
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シンクウキッチンでは、低温調理・真空調理の全体像をつかみやすいようにレベル分けしてみました。
※あくまでもシンクウキッチン独自の分け方なので、機器の呼び方や手順の詳細は他所様では通じない場合もあります。

レベルどんな必要な機材メニュー例工程
レベル0食材そのもの低温調理器ゆでたまご
温泉たまご
レベル1調味液を使用しない単一の食材フィルム状の袋
低温調理器
サラダチキン
鶏ハム
ビーフステーキの下処理
下処理
脱気包装
調味液
一次加熱
(冷却)
レベル2調味液を使用した単一食材のおかずサラダスピナー
食品真空袋
チャンバー式・ノズル式の真空パック機
低温調理器
かぼちゃの煮もの
きんぴらごぼう
小松菜の煮びたし
豚の角煮
下処理
袋詰め
調味液
脱気密封
一次加熱
冷却
二次加熱
レベル3肉と野菜、異なる処理温度の複合メニューサラダスピナー
ノズル式真空パック機・チャンバー式真空パック機
低温調理器
牛丼の具
親子丼の具
肉じゃが
筑前煮
下処理
袋詰め
調味液
脱気密封
一次加熱
冷却
二次加熱

「何がわからないのか自分でもわからない・・・」

そんな状態だからこそ、参考書をめくるように順を追って理解を深めたいですよね。

いつもの料理が一発勝負のライブ演奏だとすれば、低温調理・真空調理はパートごとに音を入れていくレコーディングに似ています。

下処理・調味・一次加熱と工程ごとに、手を止めながら進めていくことができます。

どの食材を・何のために・どういう状態にしたいのかを組み合わせていくイメージです。

基本は恒温加熱こうおんかねつの処理温度でレベル分けしていますが、使用する機器、袋によってはうまく調理できないメニューもあります。
※恒温加熱:一定の温度で加熱すること

真空調理・低温調理は決してずぼら・・・でも奇抜きばつなアイデアでもなく、調理科学そのものです。

実際に、複数施設の給食などで行われている真空調理をベースにしています。

レベル3まで理解する頃には、調理科学の知識や衛生上のポイントも深まり、いつもの料理のうでまえも格段に上がることは間違いないでしょう。

レベル0:じつはみんな知らないうちに低温調理・真空調理をしている!?

低温調理・真空調理のレベル0とも言えるのが、たまご料理。
温泉たまごやゆでたまごです。

かたゆでにも半熟にもできるのは、温度(Tempareture)と時間(Time)のTT管理ティーティーかんりを知らず知らずに行っているからです。

例えば、温泉たまごは黄身と白身で異なるたんぱく質の変性温度へんせいおんどを利用したメニューです。

そして、ゆでたまごが殻を割らないほうが日持ちするのは、脱気密封だっきみっぷうされたまま調理が完了し、開封されるまでは微生物などに二次汚染にじおせんされないからなのです。

レベル1の低温調理・真空調理の特徴

レベル1では、まだ真空パック機は必要ありません。

ポリ袋などのフィルム状の袋に食材を入れ、水圧で空気を抜いて低温調理器にかけるシンプルな方法です。

例えばどんなメニュー調理?

例えば、おなじみのサラダチキンなど、動物性たんぱく質の熱変性をコントロールするメニューがレベル1といったところです。

60℃台のジューシーな肉の食感や、70℃台の魚介類のぷりっぷりな食感が味わえます。

しかし、生こそ美食と言わんばかりに、いたずらにレアよりに真空調理・低温調理することはおすすめしません。

どんなに食材鮮度が良くてもです。

10~60℃未満は何時間加熱しようとも食中毒原因菌が増殖する可能性のある危険温度帯で、世界中の主要国の保険機関でこの温度帯を避けるよう指示されています。

したがって、シンクウキッチンには加熱温度60℃未満のレシピはありません

使用する袋は?

使用する袋の最低限の条件は次の2つ。

  • 食品対応であること
  • 耐熱温度が調理温度を超えていること

おなじみのポリ袋・アイラップは薄手で密着性も良く、耐熱温度も120℃と高めなのでおすすめです。

使用する機器には条件があります。

  • 温度表示のある低温調理器
  • 温度が任意に設定できるもの(5℃きざみあればOK)
  • 湯せん加熱であること(乾熱式の低温調理器は使用できません)

特に、温度設定については安全性の根拠にもなるので、温度範囲のわからない炊飯器の保温モードや、高低のみのアバウトなスロークッカーでの代用はおすすめできません。

必要な機材は?

低温調理器と低温調理器が設置できる深鍋やコンテナが必要です。

電気圧力鍋の低温調理モードも使用できます。
鍋やコンテナを用意する必要もなく、静音性にも密閉性にも優れているのでおすすめです。

シンクウキッチンではシロカのおうちシェフPRO Mタイプをメインに使用しています。

スティック状の低温調理器であれば洗濯ばさみで、電気圧力鍋であれば水の侵入を防げるクリップで止めるだけでOKです。

水温と食材温度の確認のため、中心温度計の使用を強くおすすめします。

いくらぐらい掛かる?

10,000円もあれば手頃で十分な性能の低温調理器が手に入れることができます。

低温調理器は7,000円~22,000円辺りまでありますが、基本的には水中ヒーターです。
設定の刻み温度は0.5℃単位のものが主流ですが、繊細な洋菓子やたまごの凝固を利用する料理でなければ、5℃単位でもレパートリーは十分でしょう。

また、不良品でもない限りできあがる料理の品質に差はありません。

フリマでは、水位センサーの誤作動や、循環をうながすスクリューの動作不良などの故障の可能性が無きにしもあらずです。

そのため、返品の可否が不明確なフリマでの購入はおすすめしません。

値段もそこまで変わらないのであれば、最初から温度コントロールの可能な電気圧力鍋を購入するという選択でもいいと思います。

調理のポイントは?

何のために低温で調理するのか、ポイントを抑えておきましょう。

たんぱく質の変性温度を狙うため

肉や魚介のたんぱく質は、はじめは規則正しく並び、立体的に折りたたまれたような状態です。
袋のインスタントラーメンの乾燥麺みたいなイメージです。

これが加熱によって熱変性し、こんがらがり、ちぢこまった状態へと変わってしまいます。
ほどくことが困難なもつれた毛糸の玉といったところでしょうか。

また、加熱が進むほど保水性も失われ、かたくぱさついた食感へと傾いていきます。
ちょうど皿うどんの揚げ麺のイメージですね。

肉や魚介の料理であれば、さすがにここまで来ると過加熱(行き過ぎた加熱)としか言えません。
ひとたび熱変性したたんぱく質はもとに戻ることはありません。

そのため、危険温度帯を超えた60℃以上から、多くの水分が失われる90℃までのあいだで、最もおいしくなる温度で、低温殺菌できる時間も合わせて確保しようというのが低温調理です。

TT管理

食材の中心温度が低温調理器の設定温度へ到達するには、長い加熱時間が必要です。

特に、2つの異なる温度帯が接するとき、双方が同じ温度になる熱平衡の状態に近づくほど熱エネルギーの移動は鈍化します。

そのため、残り3℃あたりから時間は想像以上に長くなります。

低温であるほどこの傾向は強くなるため、比較的設定温度の低いブロック状の肉料理では、長く至適温度に滞在することになります。

不正確なカウントや大きすぎるブロックなど、万が一の加熱不足があった場合は食中毒のリスクも跳ね上がります。

そのため、ブロック状の肉の低温調理は、加熱終了直後の実測が絶対に必要なのです。

設定値を目標温度よりも高くする方法もありますが、低温調理器をいったん終了させる必要やタイマーの別計測が必要で作業効率はいまいちです。

食感を大きく左右するポイントになるのが、たんぱく質のひとつであるコラーゲンの収縮です。

65℃前後で繊維方向に1/3~1/4に収縮するため、見た目にも変化が現れます。

肉の色に関係する色素たんぱくのミオグロビンの変性温度にも近いため、色合いの変化がそのシグナルとなるでしょう。

ブロック状の肉では表層部と中心部に温度差があるため、表層の色だけでの判断は禁物です。

また、鶏肉や豚肉の食中毒原因は牛肉とは異なる部分もあり、基本的には中心温度75℃/1分間(70℃/3分間)の実測をおすすめします。

この温度と時間はほとんどの食中毒原因微細菌が瞬時に死滅する温度であり、厚生労働省の提示する大量調理マニュアルでも採用される管理指標です。

レアっぽいこととおいしいことは決してイコールではありません。
安心を覚えるテクスチャは人それぞれです。

低温調理する料理を口にする誰もが、安心しておいしく食べることができる調理をしてください。

そして、低温調理・真空調理であろうとも、家庭調理はどこまでも自己責任であることは忘れないでおきましょう。

食材の鮮度

どれほど鮮度が良くても、食中毒原因に侵されていれば体調を崩します。
反対に、極端に言えばどれほど鮮度が悪くても、食中毒原因に侵されていなければ体調は崩しません。

つまり、腐っていることと食中毒原因に汚染されることは別の問題なのです。

よって、食中毒原因に侵されているうえに鮮度も悪いとなると、深刻な事態に陥るリスクがあるということになります。

食品安全の観点では、菌数がゼロに近づいたとしても、ゼロになることはありません。
安全か否かではななく、リスクの高低で考えるのが妥当です。

何より、家庭の食中毒の大半を占めるのは二次汚染で、人それぞれに環境は大きく違うのです。

食材の鮮度、入手経路、移動中の保冷、保存方法、保存中の温度、下処理の環境、調理器具の衛生状態、食材の水分量、料調味液のpH、設定温度、設定時間、盛り付けに要する時間、喫食までの配膳時間、ダイニングの室温、口に運ぶまでの時間・・・

したがって、低温調理・真空調理の保存日数について明確にすることはできません。

まとめ:まずはレベル1で成功体験を味わおう

本来、低温調理・真空調理にレベルもステップもありません。
家庭料理のひとつの作り方ですから、作りたいものを作ればいいと思います。

しかし、食材を無駄にしてしまう落とし穴は意外に多く、なにより、自分以外の誰かが食べる料理ならば衛生面の配慮は欠かせません。

最後に、家庭で行う真空調理・低温調理の保存期間については、誰にもわかりません。

なぜなら、食材の鮮度・初発菌数・脱気密封の精度・保冷環境など、あまりにも多くの状況が違うからです。

ネット上のレシピ全般に言えることですが、「〇日は日持ちします」とはならないのです。

食材鮮度について自己判断できない方には、向いていない調理法だとも言えます。

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