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低温調理講座

4.低温調理の危険性を下げ、安心して楽しむために必要なこと

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食品衛生と調理科学は、安心して低温調理・真空調理を楽しむためのいしづえとなる分野です。

小むずかしいと遠ざけずに少しずつ紐解ひもといてみてください。

安心をささえる食品衛生

低温調理・真空調理の一次加熱とは、調理を完了させ、なおかつ許容できるリスクまで菌数を減らすための処理です。

決してリスクがゼロにはなることはありません。

そして、脱気密封の精度を上げるということは、袋への熱伝達・食材への熱伝導を妨げないことと、保存中の酸化を抑えるという2点を目的としています。

しかし、どんなにうまく真空パックできたとしても、密封後の二次汚染を防げるというというだけであり、全てが安全というわけではありません。

食品を取り扱うすべてに言えることですが、手だてを尽くすことで安心感は得られても、食べ終わるまでの連続した食事シーンの中で、食中毒リスクがゼロになることはありえないのです。

一般的な衛生知識はもちろん必須、もう一歩先も必須

一般的な家庭向けの衛生知識はもちろん必要です。

極端なはなしですが、腐敗しているからといって必ずしも腹痛を起こすわけではありません。

腐敗と食中毒の違い

食中毒は腐敗や発酵の作用とは異なり、特定の微生物、産生される毒素、化学物質、自然毒によって引き起こされる中毒症状です。

耐熱性や嫌気性という特性の食中毒菌もいることから、真空調理は決して万能ではないことを知っておかなくてはなりません。

設定温度と時間だけがTT管理ではない

人気の低温調理と言えば60℃付近の肉料理です。
しかし、何℃で何分という低温調理器の設定値だけがひとり歩きしているようにも感じます。

本当に設定通りの温度に到達し、加熱時間は保持されていますか?

大切なのはあくまで実測の中心温度と到達からの経過時間です。

他にも危険温度帯についてや食品衛生のポイントなど、危険回避のアナウンスが追いついていないのが現状だと感じています。

低温調理・真空調理の核になるのが、温度(Temeperature)と時間(Time)のTT管理です。

管理すべき範囲はじつに広く、火入れの加減だけにとどまりません。
安全性を高めるためには、次のようなTT管理も必要なのです。

  • 食材解凍の温度と時間
  • 危険温度帯と食材の滞在時間
  • 目標温度までの冷却時間
  • 保存の温度と期間
  • 二次加熱終了から食べ終わるまでの時間

家庭でもHACCPに準じた衛生管理は有効

見様見真似みようみまねで低温調理・真空調理をメニューに取り入れた飲食店で、知識不足からの食中毒事例が発生しています。

業務用の冷蔵設備や独立した厨房スペースのない家庭のキッチンでは、ことさらに食中毒発生のリスクは高いと言えます。

原則すべての食品事業者に義務付けされたHACCPに沿った衛生管理手法は、決して難解なものではありません。
ポイントを抑えれば家庭でも取り組めるものです。

先の『厚生労働省 家庭でできる食中毒予防のための6つのポイント』は、家庭版のHACCPとも言えるものです。

おいしさをささえる調理科学

調理科学は、「おいしい」を科学的に導こうという学問です。

自然科学のほかにも、人文・社会科学的なアプローチもあり、調理にまつわるすべてのことが対象となるためその範囲は広大です。

調理科学はおもに栄養士・管理栄養士の養成機関での学問です。
料理好きな方であれば、その教科書の内容はとても楽しく、いたずらなレシピ本よりも数倍役に立つと思います。

「おいしい」の数値化

真空低温調理で野菜を軟化させる温度は?
肉のおいしい加熱状態とは?
真空低温調理はなぜ95℃以下なのか?
袋の中の液体は対流する?

低温調理・真空調理でぶつかったこれらの初歩的な疑問は、調理科学の文献で明快にすることができました。

調理とは化学変化の連続です。

理系知識も持ち合わせず、趣味レベルのたしなみにしてはおこがましいものですが、先人の知恵や料理人のコツが定量化されることで格段に料理の質を変えることができます。

熱をあやつる

熱の伝わり方は次の3つです。

  • 熱伝達(対流熱)
  • 熱伝導(伝導伝熱)
  • 熱放射(輻射熱)

熱伝達(対流熱)

煮る・ゆでる・蒸す・揚げるなど。

熱風式のオーブンも熱伝達です。

液体や気体など流体の分子が食材表層に激しく衝突し、表面の分子を突き動かすことで伝わる熱です。

煮くずれ、メイラード反応など大きなエネルギーも食材に伝えます。

熱伝導(伝導伝熱)

フライパンで焼く、金串を伝わる熱、湯せんなど。

炒める場合、フライパンなどの底面からの伝導伝熱と上からの対流熱が組み合わされています。

低温調理・真空調理も本質的には熱伝導による恒温加熱です。

袋の外側は湯せんによる対流熱、フィルム素材を熱伝導し、袋内側から伝導伝熱で中心部へとエネルギーを伝えます。

袋の中では対流はほぼ起きません。

他には、グリルパンなどで格子状の焼き目をつけるのも伝導伝熱です。

熱放射ねつほうしゃ輻射熱ふくしゃねつ

プラスとマイナスが引き合う電気の力がはたらく電界と、S極とN極が引き合う磁気の力がはたらく磁界。

その双方が互いに影響しながら光の速さで伝わる波が電磁波です。

X線や赤外線・マイクロ波などです。

電磁波は1秒間に波打つ回数(周波数)や次の波が来るまでに進む距離(波長)で呼び方が変わり、その性質も大きく変わります。

炭火やグリルの遠赤外線は食材の表面数ミリで吸収され、分子を動かすことで熱に変えています。

電子レンジのマイクロ波は食材の6〜7センチで吸収され、水分子を毎秒24億5千万回も回転させて起こす摩擦熱です。

輻射熱ふくしゃねつとは、電磁波による分子の振動による熱で、電磁波が吸収されていない食材内部へは伝導伝熱で伝わっているということになります。

味を入れる・のせるという感覚

料理人同士の会話の中では、「味を入れる・味をのせる」と表現されることがあります。

豚の角煮など長時間の煮込み料理で、主食材の食感を整えたあとに調味料を入れるという場合で使われます。

食材という箱を整え、味を注ぐ。

通常は同時進行なので意識しにくいだけであり、野菜炒めも根菜の煮ものも、あえものやステーキも変わりません。

低温調理・真空調理では、下処理でハードを整え、調味液というソフトを一次加熱で融合させています。

通常の調理がマルチタスクと捉えるなら、低温調理・真空調理は工程ごとにシングルタスクに分け、順番にこなしているイメージなのです。

料理の初心者にとってどちらが失敗しにくいかは容易に想像できると思います。

別々にこしらえるので時間がかかるというデメリットもありますが、何がどうなって料理として仕上がっていくのか、仕組みを理解しやすいという大きなメリットがあります。

低温調理・真空調理は知識と技術の組み合わせ

低温調理・真空調理は、狙った温度での恒温加熱と、二次汚染をシャットアウトする保存性の高さ、収納とケータリングが簡易な利便性などの特徴があります。

0.5℃単位の恒温加熱など、ガス火の調理ではプロでさえ不可能でしょう。

調理科学の知識と真空調理・低温調理の技術を身につければ、家庭料理は劇的においしく、しかも効率よくできるようになります。

調理過程への応用

真空低温調理法は、少人数でも大量な食数を同時に調理・配膳できることから、病院や福祉などの大量調理施設だけでなく外食産業でも広く活用されています。

工程ごとにわけることで品質の管理がしやすく、食感を整えるための下ゆで、装飾として焼き目をつけるためグリル、たんぱく質変性のための低温調理といった具合に、作業の目的も明確になります。

真空調理・低温調理そのものは時間がかかりますが、加熱中は調理機器に任せっきりです。

空いた時間でメイン料理に専念したり、翌日の準備をしたりと工夫次第で効率を大きく上げることができるでしょう。

献立への応用

真空調理・低温調理の最大の利点は保存性です。

  • 副菜は数日前に真空調理しておき、当日はメインに専念
  • 帰宅時間の読めない家族用にストック
  • 品数不足のときの常備菜として
  • 中途半端に残った食材を少量調理

保存性を日々の献立に活かし、調理の負担をコントロールすることができます。

また、少量の食材でも調理することができるので食材の無駄が減らせます。

同じメニューでも、好き嫌いへの対応、味つけ、ボリューム、かたさなど、個々の要望に合わせた作り分けが可能という利点も見逃せません。

まとめ:真空調理をベースにした低温調理を楽しむための参考文献

低温調理をより楽しむために参考になる書籍・文献を一部紹介します。

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